text : Ayakana Sugiura
photo : Hiroaki Katsumata(futsal grapchic)
石渡良太

常に上を目指し続ける

予選の最終戦のタジキスタンとの戦いの後の公式会見での事だった。
「正ゴレイロは、川原」
サッポはそう言った。だが、その決断をするまでは相当頭を悩ませたに違いない。なぜなら、昨年の大会では川原、石渡、定永という明確なランク付けがされていたが、1つしかない正ゴレイロの座を巡り異なる3人がこれまでに無いほどの拮抗した争いとなっているからだ。
川原を脅かすまでに成長した石渡は長身と長い手足を活かした守備が特徴で、どこに飛んでも手や足を大きく広げて、シュートコースを遮る。敵からすれば蜘蛛に覆いかぶされるような印象だろう。3人の中で最年長の76年生まれだが衰えは全く感じられず、理想的な体型を活かした守備ができるのが石渡の強みである。

波乱万丈な1年

この1年は波乱の1年だった。昨年の3月のブラジル遠征ではブラジル代表を相手に1失点に抑えてアピールしたものの、本人は「1試合だけでは駄目で、少しずつ結果を出していかないといけない」と天狗になることなく、謙虚に語っていた。
実際、前回大会ではスタメンの座を奪えず、それからは彼にとって試練が続いた。代表のポルトガル遠征ではウクライナを相手に序盤でミスを招き、リズムを作れないまま逆転負けを喫し、さらに帰国した後は、試合前の練習で眼を負傷して長期離脱となり、その間にチームメイトが大活躍。復帰してもそれまでのように絶対的なレギュラーとしてではなく、併用されるようになった。

仕事との両立でも妥協しない

昨シーズン所属していた府中アスレでは夜に練習があり、サラリーマンだった石渡はその練習に参加したいが、仕事もきちんとこなさなければならないと、仕事の出勤時間を早め、朝5時に起きていた。
それでも仕事も練習も妥協せずにこなしてきた。ブラジル戦で良い結果を出しても気を緩めず、今大会のタジキスタン戦では1失点を喫したが、直接決められたFKは壁が動いて間を通されたものであってゴレイロの責任ではない。それでも、「(壁の間を通されても)それを止めないとね」と決して満足することは無い。

その気持ちが今のゴレイロの争いにつながっているし、日本の安定感を増している。出番は少ないかもしれないが、日本の2連覇を支える1人であることには間違いない。

Profile:いしわた りょうた 1976年12月8日生 185p、85s ペスカドーラ町田所属