text : Ayakana Sugiura
photo : Hiroaki Katsumata(futsal grapchic)
鈴村拓也

日本の壁からアジアの壁へ

日本がアジア選手権で4年連続準優勝に甘んじてきたのはイランがいたから。いや、イランがというよりも、シャムサイーがイランにいたからといっても過言ではない。彼に痛いほど得点を奪われ、彼を止めなければ日本の優勝はありえなかった。
昨年、念願のイラン越えを果たしたが、木暮がMVPを獲得する影で、鈴村がシャムサイーをシャットアウトする姿があった。ただ、一昨年前にイランを1度倒した時の手ごたえが鈴村には既にあり、このときは既にシャムサイーと鈴村の立場はそれまでとは逆転していた。まさに鈴村の完勝だった。

スペインでの苦杯、経験

鈴村はスペインで2シーズン半を過ごしたが、試合に出場できるようになったのは今シーズンになってからである。それまでは監督の信頼も得るのに苦労し、出場機会に恵まれなかった。だが、昨シーズン終了後、それまでのコーチが監督に昇格し、鈴村に「来年も残って欲しい」と伝えた。前監督に使われなかった選手でも、新監督は鈴村の良さを見抜いていた。そして決して厚いとは言えない選手層で、シーズン開幕前は降格争いが予想されたチームだったが、鈴村は期待に応えた。毎試合35分前後出場し、守備だけでなく攻撃にも積極的に絡むと、チームは開幕当初は首位に躍り出るサプライズも起こし、最後は16チーム中6位で終えた。
バルガスでは「あべしッ!」などおかしな日本語が流行っている。もちろん鈴村が教えたものだが、彼がチームに馴染み、チームメイトから信頼されている証拠でもある。

玄人好みなプレーに注目

スペインでは目立たないプレーでも、良いプレーであれば誉められる。目立たないカバーリングやカウンターのサポートなど、日本ではあまり評価されないプレーが本場では玄人に好まれる。スペインではチームメイトだけでなくサポーターからも鈴村の評価は高い。
「表彰されなくてもそういうプレーをわかってくれる人がいてくれればいいねん(笑)」
彼が本職で目立って活躍する事は、日本が劣勢に立たされる事なのであまり好ましくない事だが、彼の何気ない1つ1つのプレーが日本を支えている。そして、今年もシャムサイーをシャットアウトして日本を優勝に導いてくれるだろう。

Profile:すずむら たくや 1978年9月13日生 175p、73s バルガス(スペイン)所属